東京の地震災害リスクをことさら強調?

 政府は6月12日に、首都直下地震の発生に備えた「緊急対策推進基本計画」の改定を閣議決定しました。
"首都直下地震の死者数・建物被害を「半数以下」に…「緊急対策推進基本計画」改定を閣議決定" 2026/06/12 10:23
(https://www.yomiuri.co.jp/national/20260612-GYT1T00149/)

 首都直下地震とは、首都圏やその周辺で起こることが想定されているマグニチュード7〜8クラスの地震の総称になります。
 図1は切迫性の高いとされているマグニチュード7クラスの地震の震源を表しています。

図1:検討対象になっているマグニチュード7クラスの地震の断層位置及び地震規模
(https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg_02/pdf/r7houkoku3.pdf より引用)

 6月16日19時46分頃に発生した最大震度5弱(暫定マグニチュード5.5)の地震の震源地は茨城県南部でした(図2)。
 図1と見比べると、今回の地震の震源付近でもマグニチュード7クラスの地震が発生する可能性があるとされています。

図2:16日に発生した茨城県南部の地震の震源地
(https://www.jma.go.jp/jma/press/2606/16a/kaisetsu202606162145.pdf より引用)

 なお、首都直下地震では、大正関東地震や元禄地震のようなマグニチュード8クラスの地震も想定されています。

 今回の改訂では、切迫性が高いマグニチュード7クラスの地震のうち、都心南部直下(マグニチュード7.3)を想定震源としています。
 そして、今後10年間で死者数と建物被害を半数以下に減らすことや、AI(人工知能)の発達などでデマが拡散される恐れがあるとして、発災初期からSNSを確認し、打ち消す情報を発信することなどが掲げられました。

 また、東京圏への集中を踏まえた国土のあり方を中長期的な課題として検討することや、首都中枢機能の維持が困難となる最悪の事態も想定した一時的な代替拠点の確保をあらかじめ検討しておくことなどが新たに盛り込まれました。

 これに対し、東京都の小池知事は「首都東京の災害リスクをことさらに強調し、『東京が危ない』という誤ったメッセージになりかねない」と指摘しました。
「東京が危ないという誤ったメッセージ」 小池知事、首都直下地震の政府計画改定に苦言
(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2729086)
「国の「首都直下地震緊急対策推進基本計画」に係る知事コメント」
(https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/06/2026061209)

 果たして「東京が危ない」は、誤ったメッセージなのでしょうか。
 現在の東京は、昔から何度となく大きな地震に見舞われています。東京は、もともと危ない地域です。そして、大正関東地震(関東大震災)から100年以上が経過し、次の大地震発生が危惧されています。「東京は危なくない」のほうがむしろ誤っています。

 今回の政府の発表に対して「首都東京の災害リスクをことさらに強調」といった視点は、現状から目を背けるような発言であり、東京都知事としてふさわしいのか、甚だ疑問に思います。

 被害をできるだけ少なくしようと、いろいろ対策を打っていることは理解できます。しかし、首都中枢機能の維持が困難となる事態も想定し、混乱を最小限に抑えるために、その対策を講じることもまた、東京都として考えておくべきことなのではないでしょうか。

 今回政府が打ち出した「一時的な代替拠点の確保」に異を唱えることが、日本にとってプラスになるとは思ません。
 日本の首都東京の知事という立場は、もっと大局的に物事を見る力が必要だと思います。

2026年06月19日