加速するCO2増加の原因は?(2)
2025年の世界人口は、1990年頃に予測された約82億人とほぼ同じ約82億人3,200万人と推計されています。
(https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/J08447.pdf)
(https://tokyo.unfpa.org/ja/publications/swop2025
世界のエネルギー消費について、1990年と比較して2020年は実際にどうだったのかを Energy Institute, "Statistical Review of World Energy 2025" から引用します。ただし、2020年はパンデミックの影響でエネルギー消費が落ち込んでいるので、2019年と2021年の値の中間値を推定値として用いることにします。
世界全体のエネルギー消費は約1.7倍になったので予測通りでした。ただし、内訳は少し異なります。特に再エネ(水力・その他)の伸びが大きく予測を超えました。それぞれおよそ石油1.4倍 (1.5)、石炭1.7倍 (1.8)、天然ガス2.0倍 (1.8)、原子力1.4倍 (1.6)、水力・その他 3.4倍 (2.1)です。(カッコ内の数値は1993年時点の予測)
二酸化炭素 (CO2) 排出係数の比率は、石炭を10とした場合、石油 7.5、天然ガス 5.5 となり(https://www.env.go.jp/council/16pol-ear/y164-04/mat04.pdf)、同じ熱量を得るために排出されるCO2は、3種のうちで天然ガスが最も少なくなります(石炭の6割弱)。
石炭が予測より若干低くなった一方で、天然ガスは少しだけ予測を上回りました。そして何より、再エネ(水力・その他)が大きく予測を上回りました。
普通に考えれば、世界全体の伸びは予測通りで、CO2排出量が少ないエネルギー源が予測よりも伸びたわけですから、世界全体としてのCO2排出量は予測よりも低くなると考えられます。
Statistical Review of World Energy 2025 によれば、パンデミックの影響が強い2020年のCO2排出量(実測データに基づく推計値)は約324億トンですが、2019年は約341億トンでした。
一方、IPCCの報告書(https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/03/ipcc_far_wg_III_full_report.pdf)によれば、1990年版の報告書では何も対策を講じなかった場合(最悪のケース)、2020年のCO2排出量は約341億トン(※) と予測されていました。2019年には最悪ケースの予測に達していたことになります。
おかしくありませんか?
世界全体のエネルギー消費の伸びがほぼ予測通りのなかで、石炭火力が予測を下回り、再エネは予測をかなり上回って増加しました。確かに対策は講じたのに、CO2排出量は予測より低くはならなかったのです(ほぼ同じだった)。
その理由としては、いくつかの可能性が考えられます。
ひとつは、Energy Institute と IPCC が別組織のために生じた齟齬(そご)です。例えば、2020年のCO2排出量を最悪ケースで約400億トンにすべきだったところを、見積もりが甘く約341億トンにしてしまった、などです。
もうひとつは、1990年当時に再エネの推進等で減ると考えられていたCO2排出量が、実際は机上の論理に過ぎなかった、言い換えるなら、思っていたほどの効果はなかった可能性です。
さらに、今回はエネルギー由来のCO2の割合が大きい(一般的に4割程度)ことから、エネルギーのみで考察しましたが、他の部門からの、もしくは人為的でない(自然由来の)CO2排出量の影響により、再エネ等の対策効果が相殺された可能性も考えられます。
いずれにしても事実としていえることは、確かに対策は講じてきましたが、その成果は結果として現れなかったということです。つまり、対策そのものが誤っていた可能性です。
加速するCO2増加の原因は、30年以上前になされた予測通りにエネルギー消費が増加し、それに伴ってCO2排出量も増加したためと考えられます。そして、その背景にはCO2排出削減対策として行なってきたことが役立たなかったことがあるといえます。
(※) https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/03/ipcc_far_wg_III_full_report.pdf より
POLICYMAKERS SUMMARY のTABLE 1 には、TASK A "BUSINESS AS USUAL" SCENARIO として1985年と2025年のCO2 Emissions (BTC: Billion Tons Carbon) がそれぞれ 5.1, 9.9 と示されています。直線的に増加するとした場合、1990年と2020年はそれぞれ 5.7, 9.3 になります。BTC: Billion Tons Carbon は、GtC: Giga-tonnes Carbon と同義で炭素換算です。これからCO2の値を出すには、質量数 C:12, O:16から CO2: 44になるので、9.3 [GtC] → 9.3× (44/12) → 約341億トンになります。